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大阪市予算、緊急経済対策で8年ぶり増 生活保護費最高
2009年2月19日
大阪市は19日、総額1兆6278億円の09年度一般会計当初予算案を発表した。景気悪化に伴い、緊急経済対策を計上、8年ぶりに前年度を353億円上回った。法人市民税は過去最大の落ち込みとなり、市債増発や人件費カットで補ったが、今後、財政収支はさらに悪化する見通しだ。
緊急経済対策には1千人を超える新規雇用確保などで1331億円を計上、中小企業向け緊急融資や雇用対策なども実施する。生活保護費は2443億円で前年度より65億円増加し、過去最高。市の受給者は約12万人(速報値)で人口の4.47%を占め、政令指定市の中で最も高い。昨年12月の申請件数は前年同月比3割増だった。
市税収入は6410億円で、08年度より458億円(6.7%)減。市税の2割を占める法人市民税は、457億円(26.9%)減と過去最大の減収。職員給料を平均5%カットし、退職手当債を前年度より3割増やし、限度額いっぱいの160億円発行。都市整備事業基金を31億円取り崩すなどして賄った。
平松邦夫市長は1年目の08年度の予算編成で前市長の歳出削減路線を踏襲。18日の記者会見では「財政が厳しい中、限りある財源を重点施策にあてた。09年度は、私の政策ビジョンの実現に向けたスタートの年。市民と一緒に大阪を元気にしたい」と語った。
一方、大阪府の橋下徹知事が府庁移転を目指す市の第三セクター「大阪ワールドトレードセンタービルディング」(WTC)に関連し、周辺の臨海部開発に22億円を計上し、府庁移転構想を間接的に支援する。
平松カラー随所に大阪市新予算
文化・環境・子育て手厚く
「自己採点は100点」。19日発表された大阪市の2009年度当初予算案について、平松邦夫市長はそう胸を張った。前年度比2・2%増の積極型となった一般会計(1兆6278億円)では、自身がこだわる市民協働や文化、環境、子育て分野に重点配分するなど平松カラーを随所にちりばめた。だが、市税収入は大幅に減少し、〈負の遺産〉の処理も山積しており、財政運営の足元は心もとない。
■市民協働
平松市長が重要施策に位置づける市民協働関連事業は治安、放置自転車、ごみ減量の3分野を中心に総額70億9800万円を計上。「街頭犯罪ワースト1返上」を掲げる治安対策には、4億円の事業費を盛り込んだ。東住吉、東淀川、平野3区のモデル地区では、地元町会などにパトロール用車両を30台配備。警察官OBを計6人配置し、地域の防犯活動を支援。全区には、防犯カメラ設置費用の半分(1台上限15万円)を町会などを対象に補助。地下道や駐輪場計23か所に、防犯ベルなどを取り付ける。
放置自転車対策では、キタとミナミで放置禁止区域を順次拡大しつつ、計800台分の駐輪場を整備。町会や商店会と協定を結んで撤去場所などを協議して効果的な一掃作戦を展開、事業費は計2億7200万円。ごみ減量化は、2007年度に148万トン排出された量を11年度までに約130万トンに減らす目標値を設定。区役所などに限られていた紙パックや乾電池の回収場所を前年度比で約10%増の386か所に拡大するなど、リサイクルを徹底する。
■重点施策
市の第3セクタービル「大阪ワールドトレードセンタービルディング」(WTC)への府庁舎移転実現に向けて、WTCと最寄りの地下鉄駅をつなぐ歩道橋の整備や企業誘致策の検討など、臨海部の活性化施策に22億円を充てた。
住まいの耐震強化(1億3100万円)では、古い家屋に限っていた耐震診断・改修の補助対象を全住宅に拡充する。改修費の補助率も23%から50%に高める。
昨年5月発覚の民間マンションの不正建て増し問題を受け、建物完成後に完了検査を受けていないホテルなど2万2000棟の特殊建築物を2年間で全数調査(2000万円)する。
ヒートアイランド現象の緩和に向け、涼しい海風を市街地などに導く「風の道」のモデル地区に、長堀通の約2キロ区間を選んだ(7600万円)。中央分離帯の緑化や歩車道の散水などを進め、気温・湿度などの低減効果をチェックする。
新たな雇用機会設ける
平松市長一問一答
平松市長の記者会見の主なやりとりは次の通り。
――予算にどんな〈平松カラー〉を盛り込んだか
就任以来、同じ事業を別の部局同士がバラバラにやるムダなど、行政は縦割りだと何度も感じた。初めて手がけた予算はソフト面を重視した市民協働型。行政の枠組みは壊せないが、職員に連携という課題を持たせることができた。自己採点は100点だが、120点にする動きをしないと。
――歳出削減と同時に、雇用対策も求められる。予算でどう調整したのか
財政危機でも、周辺都市の住民を含めて新たな雇用機会を設ける。中小企業の元気回復に向け、融資以外の施策も積極的に取り組む。
――将来見込まれる300億円の財源不足対応は
今後の見通しの検討は必要だが、まずは、今をどう乗り切るかに重点を置いている。予算に数値目標を掲げたことで、途中段階での見直しもできるはずだ。
――市民協働の成果を出すためのポイントは
特に子育てや教育に重点を置いたが、大阪は「民」が作り上げてきた街。今後の市役所や区役所のかかわりで、そんな市民の“DNA”に働きかけていきたい。
▼防災・環境
・区民防災コーチ養成など自主防災組織の確立促進【2400万円】
・住宅や事業所への太陽光発電装置の設置補助【4300万円】
・市役所や区役所、学校の屋上・壁面緑化【9400万円】
▼経済・雇用
・企業OBが海外販路開拓支援する「売りづくり」事業【8600万円】
・離職者向け就職相談会などの就労支援対策【20億5800万円】
・なにわの伝統野菜の直売所「とれたん市場」設置【5100万円】
▼子育て・教育
・家庭や企業などが果たす子育ての役割を行動指針化【400万円】
・保育士の家庭訪問などの子育て支援【900万円】
・小学3年~中学3年に習熟度別少人数授業【13億2200万円】
▼くらし・福祉
・ひきこもり相談窓口(仮称)開設【400万円】
・防護服購入など新型インフルエンザ対策推進【2200万円】
・空き店舗を高齢者の地域交流スペースに活用【6600万円】
▼観光・文化
・大阪城とオーストリアの城の友好城郭提携・記念行事【1000万円】
・市民が観光ガイドを務めるコミュニティ・ツーリズム事業【3500万円】
・「まちなか観光案内所(仮称)」の整備【200万円】